交通事故に遭うと、突然の出来事に混乱し、何をどうすれば良いかわからなくなることが多いと思います。そんな時に役立つ情報を、分かりやすくお伝えします。
1 事故後にとるべき行動
事故直後、真っ先にすべきこととしては、警察への通報です。
その後、もし事故によりケガをしてしまった場合には、医療機関を受診しましょう。そのほか、事故発生の報告をするため、ご加入の任意保険会社への連絡をおすすめします。
2 任意保険会社との示談交渉
事故の相手方が任意保険に加入している場合、その保険会社と示談交渉を行います。示談交渉では、損害額や後遺障害の程度について話し合い、最終的な賠償額を決定します。示談が成立すれば、合意した金額が支払われます。
任意保険会社との交渉に当たっては、まずは事故の状況を正確に把握し、過失割合を検討します。過失割合とは、どちらにどれだけの過失があったかを示すものです。例えば、信号無視の車と横断歩道を渡っていた歩行者が事故を起こした場合、どちらにどれだけの責任があるかを検討します。この割合は、最終的な損害賠償額に大きく影響します。
3 損害の種類とその内容
次に、損害額を費目ごとに算定します。損害には、「人的損害」と「物的損害」の2つがあります。人身損害の内容としては、治療費、入院費、通院交通費、休業損害、慰謝料等、物的損害の内容としては、修理費用、レッカー費用、代車費用等があります。これらの費用をしっかりと計算し、賠償請求を行います。
一定期間医療機関に通っても治療が終わらず、症状が一定の状態で固定された場合を「症状固定」と言います。症状固定後に、後遺障害が残るかどうかを判断し、自賠責後遺障害等級の認定を受けます。この等級は、後遺障害の程度に応じて決まり、賠償額に影響します。
4 自賠責保険に対する被害者請求権の消滅時効に要注意
交通事故の被害者には、自賠責保険に対する請求権があります。しかし、この請求権には時効があるため、注意が必要です。具体的には、傷害分は事故発生から、後遺傷害分は症状固定から各3年以内に請求しなければなりません(ただし、平成22年4月1日以降に発生した事故の場合)。この期間を過ぎてしまうと、自賠責保険に対する請求権を失い、賠償を受けることができなくなります。事故後は早めに対応することが重要です。
5 改正民法の影響
2020年に施行された改正民法により、民事法定利率が変動制となり、年5%から年3%に下がりました。これにより、一括払いされる賠償金の運用益として控除される中間利息が減るため、被害者にとって有利になります。
一方、判決時に支払われる遅延損害金も減りますが、これは被害者にとって不利です。しかし、全体としては中間利息控除の減少による賠償額への影響が大きいため、被害者に有利と言えるでしょう。
交通事故に遭った場合、迅速な対応と専門的な知識が求められます。この記事が皆様の一助となれば幸いです。
〔弁護士 馬場大祐〕