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法律コラム

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交通事故に遭った兼業主婦の方々には、特有の問題があります。その中でも「休業損害」は大きなポイントです。兼業主婦で実収入が女性の全学歴全年齢賃金センサスより低い場合には、主婦としての休業損害請求が可能です。これについて詳しく説明します。


1 主婦休損という補償の仕組みとは


兼業主婦とは、家事を行いつつ勤め仕事をしている女性を指します。交通事故によって後遺障害が残った場合、その影響は家事と仕事の両方に及びます。このような場合、休業損害を請求する際には、主婦としての家事労働の価値も考慮されます。具体的には、兼業主婦が交通事故により家事を十分に行えなくなった場合、その損失分を補償するために「主婦休損」として請求できます。特に、実収入が女性の全学歴全年齢賃金センサスより低い場合、主婦休損の請求が認められやすくなります。


2 フルタイム勤務で主婦休損が認められるかどうか


フルタイムで働く兼業主婦が交通事故でケガを負った場合、仕事に影響が出るため、通常の休業損害が発生します。他方、家事労働の面でも損失が生じます。

裁判での争いになった際に、フルタイム勤務というだけで主婦休損が否定されることはほとんどなく、基本的には実収入が賃金センサスよりも高いか低いかで判断することになります。


3 家事従事者の休業損害の相場観


家事従事者の休業損害は、厳密な証明が必要ない一方で、評価の仕方に幅があります。東京地方裁判所では、むち打ちのような軽度のケースでは20~50万円、等級14級のような後遺障害が残る場合では40~80万円程度が多いとされているようです。


算定方法としては、まず女性の平均賃金を365日で割って日額を算出します。そして、①実際に通院した日数に上記日額を掛ける方法、②最初の30日間は100%、次の30日間は50%として徐々に減らして計算する方法、③通院期間全体で平均した掛け率を掛ける方法があります。裁判では、②の方法がよく使われているようです。


まとめ


兼業主婦が交通事故で後遺障害を負った場合、仕事と家事の両面での損害を適切に補償するために、主婦休損の請求が重要です。実収入が低い場合には、家事労働の価値を評価することで、適正な補償を受けることができます。

休業損害の請求について不安や疑問がある場合は、弁護士に相談することをお勧めします。

〔弁護士 馬場大祐〕

離婚に際して、財産分与は重要な手続きです。財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に築いた財産を公平に分けることを指します。ここでは、財産分与の請求方法、評価基準時、そして割合について詳しく説明します。


1 財産分与の請求方法


財産分与の請求は、離婚手続きと並行して行うことが一般的ですが、離婚後も財産分与の調停や審判を申し立てることが可能です。財産分与の請求をするためには、まず、家庭裁判所に調停を申し立てます。調停では、夫婦双方の話し合いにより財産分与の内容を決定しますが、話し合いがまとまらない場合は、裁判所が審判で決定します。注意すべきは、財産分与の請求には「除斥期間」があることです。離婚後2年以内に請求しないと、財産分与の権利が消滅しますので、速やかに対応することが重要です。


2 財産分与の評価基準時


財産分与の対象となる財産は、婚姻期間中に夫婦が共同で築いた財産です。この財産の評価基準時は、「別居時」と「離婚時」のどちらかが一般的に採用されます。別居時とは、夫婦が実質的に家庭を維持しなくなった時点での財産の状況を指し、離婚時とは、法律上の離婚が成立した時点での財産の状況を指します。どちらの基準時を採用するかは、具体的な事情により異なるため、個別のケースに応じた判断が求められます。


3 財産分与の割合


財産分与の割合は、夫婦の寄与度に基づいて決定されます。一般的には、夫婦が共同で築いた財産は、基本的に2分の1ずつ分けることが原則です。例えば、一方が専業主婦(夫)として家庭を支えた場合でも、その労働価値は経済的な貢献と同等と見なされるため、2分の1の割合が適用されることが多いです。しかし、個別の事情により、夫婦のどちらかが特に多くの貢献をしたと認められる場合には、分与の割合が調整されることもあります。


まとめ


離婚に伴う財産分与は、夫婦の経済的自立を助ける重要な手続きです。請求方法としては、家庭裁判所への調停や審判の申し立てがあり、評価基準時は別居時か離婚時の財産状況を基にします。また、分与の割合は基本的に2分の1ですが、個別の事情により調整されることもあります。


財産分与の請求は離婚後でも可能ですが、除斥期間の2年以内に行う必要があります。これらの手続きについてお困りの場合や疑問がある場合は、専門の弁護士に相談することをお勧めします。弁護士は、あなたの権利を守り、公平な財産分与を実現するためのサポートを提供します。どうぞお気軽にご相談ください。

〔弁護士 馬場大祐〕

遺言書は、遺産相続を円滑に進めるために非常に重要な役割を果たします。遺言書を適切に作成しておくことで、相続人間のトラブルを防ぎ、故人の意思を確実に伝えることができます。ここでは、遺言書の作成方法について、①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言の3つの種類に分けて説明し、相続発生時に行うべきことも併せて解説します。

1 自筆証書遺言・公正証書遺言とは


自筆証書遺言


自筆証書遺言は、遺言者が自身で全文を手書きして作成する遺言です。メリットは、簡単に作成でき、費用がかからない点です。しかし、形式不備や紛失のリスクがあるため、注意が必要です。なお、2020年の法改正により、自筆証書遺言は法務局での保管が可能になり、紛失や偽造のリスクが軽減されました。


公正証書遺言


公正証書遺言は、公証人が作成する遺言です。公証役場で遺言者の意思を確認し、公証人が記録します。メリットは、法律の専門家である公証人が関与するため、形式不備のおそれがなく、紛失や偽造のリスクも少ない点です。デメリットは、作成費用がかかることです。また、公証役場に出向く手間もあります。


2 秘密証書遺言とは


秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしておくことができる遺言です。遺言者が自分で書いた遺言書を封印し、公証人と証人の前で封印状態を確認してもらいます。メリットは、内容を誰にも知られずに遺言を残せる点です。デメリットは、形式不備があった場合に無効になる可能性があることと、保管場所に注意が必要な点です。また、内容が確認できないため、紛失や破損のリスクもあります。


3 相続発生時とその後の手続き


遺言がある場合、相続発生時に行うべきことは次の通りです。まず、遺言書の存在を確認します。自筆証書遺言の場合は家庭裁判所で検認を受ける必要があります。これは、遺言の内容を確認し、偽造や変造を防ぐための手続きです。公正証書遺言の場合は、検認手続きが不要であり、速やかに相続手続きに入ることができます。秘密証書遺言の場合も検認が必要です。


遺言書が見つかったら、内容に従って遺産分割を進めます。遺言執行者が指定されている場合は、その指示に従い手続きを行います。遺言執行者がいない場合は、相続人全員で協議しながら遺産分割を進めます。


遺言書の作成は、将来の相続トラブルを防ぐために非常に重要です。適切な形式で遺言を残すことで、故人の意思を確実に伝えることができます。遺言書作成や相続手続きに関する疑問や不安がある場合は、専門の弁護士に相談することをお勧めします。弁護士は、遺言書の作成から相続手続きまで、総合的にサポートいたします。どうぞお気軽にご相談ください。

〔弁護士 馬場大祐〕

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