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法律コラム

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―事業者が知っておきたい実務対応―


取引先との信頼関係の上に成り立つ商取引において、売掛金の発生は避けがたいものです。しかし、支払いが滞った場合、経営に与える影響は少なくありません。特に桐生市、みどり市周辺地域のように地元の取引先とのつながりを大切にする商習慣のある地域では、法的措置に踏み出すことへの心理的な抵抗も少なくないでしょう。もっとも、未回収のまま放置すれば、資金繰りの悪化は避けられず、場合によっては事業継続そのものが危ぶまれる事態にもなりかねません。


ここでは、売掛金未回収を防ぐための法的手段と、その前段階として講じるべき予防策について、法律に明るくない方にも分かりやすくご説明いたします。



売掛金未回収の「予防」が第一の対策


まず重要なのは、トラブルが起きてから対応するのではなく、「未回収を生じさせない」ための予防的手段を取っておくことです。契約書を交わす、請求書を定期的に送付する、などといった基本的な対応はもちろんですが、実際の現場では「口約束での取引が多い」「取引先との関係性を壊したくない」という理由で、形式的な契約書が存在しないことも少なくありません。


しかし、売掛金の発生には必ず「法律上の債権」が伴います。つまり、代金支払義務が発生している以上、その内容や条件を証明できる書面がなければ、万一の法的措置において不利になる場合があります。たとえ長年付き合いのある相手であっても、納品書や発注書、メールでのやりとりなどを残し、口頭の約束は文書化するよう心がけるべきです。


また、支払い条件についても曖昧な合意ではなく、「〇年〇月〇日までに指定口座に振込」と明記し、取引のたびに確認することが望ましいでしょう。さらに、相手の信用状況に応じて、前金・分割・担保などの条件を付ける判断も必要です。


とりわけ近年、建設業や製造業などでは、元請企業の経営状況が急変し、下請代金が回収不能となるケースも見受けられます。地域の中小企業にとっては、地元の中堅企業との取引に安心感を持ちやすい傾向がありますが、過信せず、相手先の登記情報や財務内容のチェック、支払い遅延の兆候の把握など、冷静な目を持つことも大切です。



未回収が発生したときの対応と法的手段


それでも、いくら予防策を講じていても、完全に未回収リスクをゼロにすることはできません。支払期限を過ぎても入金がない場合、まずは電話やメールでの催促を行い、それでも反応がない場合には、文書による正式な督促を行うべきです。


文書は、「いつ、誰が、どのような内容を送ったか」を証拠として残す手段です。より確実な証拠とするためには、内容証明郵便の活用も有用です。特に「このまま支払いがなければ法的措置も検討する」といった文言を盛り込むことで、相手に対する心理的な圧力を与えることもできます。


それでも任意の支払いがなされない場合、民事訴訟の提起を検討することになります。民事訴訟においては、売掛金の発生と支払義務の存在を立証する必要があり、ここでも契約書や請求書、納品書、取引履歴などの書面が重要な役割を果たします。


訴訟に勝訴し、確定判決を得た後でも、支払いがなされない場合には、預金口座の差押えや動産執行などの強制執行手続を通じて回収を図ることになります。ただし、相手方に資産がなければ、これらの措置を講じても実際の回収には至らないこともあります。その意味では、「回収可能性の見極め」と「コストとのバランス」を慎重に判断する必要があります。



地域密着の弁護士との連携で安心感を


桐生市、みどり市周辺で事業を営む中小企業や個人事業主にとって、売掛金の未回収問題は他人事ではありません。資金繰りへの影響が大きいことはもちろん、取引先との関係性や地域内の評判への影響も無視できない要素です。そのため、「弁護士に相談するのは最終手段」と考える方も少なくありません。


しかし、実際には、未回収のリスクを回避する契約書の作成や取引条件の見直しといった段階から、弁護士のアドバイスが有効な場合もあります。また、内容証明の送付や支払督促申立てなど、比較的簡易な手続きにおいても、法的に整った書面で行うことで、相手方の反応が大きく変わることがあります。


さらに、地元に根差した法律事務所であれば、地域における商習慣や企業間のつながりにも理解があり、「単に法的措置を取るだけでなく、関係性を壊さずに交渉を進める」といった柔軟な対応も期待できます。信頼できる弁護士と日頃から連携を取り、いざというときに相談できる関係性を築いておくことは、経営者にとって大きな安心材料となるでしょう。



未回収の問題は、決して特殊なトラブルではなく、事業を営むうえで日常的に直面し得るリスクのひとつです。だからこそ、事前の予防と早期の対応が何よりも重要です。「困ったときに頼れる存在」を持つことで、事業の安定性と信頼性は大きく高まります。桐生市、みどり市周辺で頑張る事業者の皆様が、安心して本業に専念できるよう、私たち弁護士はこれからも実務的かつ親身なサポートを心がけてまいります。


〔弁護士 馬場大祐〕



――相続人同士の信頼関係が揺らいだとき、どう対応すべきか――



身近に起こりうる「使途不明金」の問題とは


遺産相続をめぐる問題は、親族間での感情のもつれと密接に関係することが多く、特に「使途不明金」の存在が発覚したときには、話し合いが一気に険悪なものとなりがちです。これは、被相続人の預貯金などが生前に引き出されていたが、その使途が不明であり、相続人の一人が不正に使ったのではないかと疑念が生じるような場面を指します。


当事務所でも、親御さんと同居していた兄弟が口座管理をしていたところ、「他の相続人に無断で多額の出金があった」として紛争に発展する事例について相談を受けることがあります。こうした問題は、相続手続において「遺産分割協議が進まない」「信頼関係が崩れた」といった状況を引き起こす原因になります。


では、この「使途不明金」の問題に直面したとき、法的にはどのように対応していけば良いのでしょうか。



法的観点から見る使途不明金の位置づけ


まず、「使途不明金」があった場合に、そのお金がどのように扱われるかは、法的には大きく二つの可能性があります。一つは「特別受益」、もう一つは「不当利得・不法行為等に基づく返還請求」の対象となる場合です。


特別受益とは、相続人の一人が生前贈与や遺贈などで他の相続人に比べて過大な利益を受けていた場合に、それを遺産の前渡しとして扱う制度です。一方、被相続人の財産を相続人の一人が勝手に流用したような場合には、贈与ではなく「不法行為」にあたるとして、返還を請求することも考えられます。


もっとも、これらを主張するためには、「誰が」「いくら」「いつ」「どのように」出金したのか、その金銭の使途が正当かどうかといった事実関係の立証が必要となります。この点が、実務上の最も大きな壁となります。なぜなら、預金口座の明細や取引履歴だけでは、お金の使い道までは明らかにならないことが多く、特に介護費用や生活費として用いられた場合には、境界が曖昧になりがちだからです。



話し合いによる解決と調停・訴訟の選択肢


現実的には、遺産分割協議の場面で使途不明金の問題が持ち上がると、その相手を責めるだけでは話し合いが進まず、かえって感情的な対立が深まってしまいます。そこで、弁護士など第三者を交えた冷静な対話の場を設けることが、円満解決の第一歩となります。


それでも話し合いが整わない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。調停では、中立の立場にある調停委員が間に入り、各相続人の言い分を調整しながら、合意に向けた道筋を探ります。ここでも「使途不明金」の具体的な内容や証拠が求められますが、調停委員が客観的に状況を整理してくれることにより、相続人同士の直接対立を緩和する効果が期待されます。


また、使途不明金の返還を求める訴訟を別途起こすことも可能です。ただし、裁判になると証拠に基づいた主張が不可欠となり、時間や費用の負担も増します。したがって、証拠がある程度そろっていて、かつ解決の見通しがある場合に選択することが現実的です。



使途不明金をめぐるトラブルを防ぐために


こうした問題に直面しないためには、被相続人が元気なうちから「家族信託」や「任意後見契約」などを利用し、金銭管理の在り方を明確にしておくことも有効です。また、相続人の立場としては、介護や支援を担っていた兄弟姉妹に対して、不信感を募らせる前に、まずは「どういう事情で引き出したのか」「何に使ったのか」といった事実確認を丁寧に行う姿勢が大切です。


使途不明金があるからといって直ちに相手の不正や悪意を断じるのではなく、事情を共有し合い、合理的な説明を求めることによって、無用な対立を回避できるケースも少なくありません。桐生市やみどり市といった地域社会においては、家族同士の結びつきが強い分、相続をめぐる争いも感情的になりやすい側面がありますが、それだけに、冷静な対処こそが円満な解決への鍵となります。


当事務所でも、遺産分割協議を進める中で使途不明金が問題となっているご相談を多数お受けしております。桐生・太田・みどり市など、東毛地域にお住まいの皆様にとって、納得のいく相続が実現できるよう、法律の観点から丁寧にサポートいたします。疑問や不安がある方は、お一人で抱え込まず、お早めにご相談ください。


〔弁護士 馬場大祐〕

― 桐生市、みどり市周辺地域で事故に遭われた方へ ―


交通事故は、ある日突然、誰にでも起こり得るものです。日常の中で車を運転し、あるいは歩行者として道を歩く以上、予期せぬ事故に巻き込まれる可能性は常に存在します。とくに群馬県東毛地域――桐生市、太田市、館林市、みどり市、伊勢崎市などでは、車社会ゆえの交通量の多さや、交差点での事故リスクの高さが問題となっており、地域における事故の相談も年々増加しています。


事故後にまず生じるのが、治療や修理といった物理的な対応ですが、それと並行して重要になるのが、相手方や保険会社との「示談交渉」です。今回は、交通事故における示談の意味や流れ、そして弁護士が果たす役割について、法律に不慣れな方でも分かりやすくご説明いたします。



示談交渉とは何か、なぜ慎重な対応が必要なのか


交通事故の「示談交渉」とは、事故によって生じた損害(治療費、慰謝料、修理費、休業損害など)について、当事者間で賠償の内容を話し合い、裁判によらず合意によって解決を図る手続です。示談が成立すれば、その内容に従って支払いがなされ、以後、同じ事故について改めて請求することはできません。


この点で示談交渉は、事故処理の“終着点”ともいえる重要な局面です。しかし、現実にはこの交渉が一方的になされるケースが少なくありません。特に被害者側が保険や法律に関する知識を持たず、保険会社の担当者から提示された金額をそのまま受け入れてしまう場合、本来得られるべき補償の水準を大きく下回る結果となることがあります。


交通事故実務において「自賠責基準」「任意保険基準」など、複数の賠償基準がありますが、いずれも必ずしも被害者の立場を最大限に反映したものではありません。一方で、裁判例に基づく「裁判基準(弁護士基準)」を用いれば、慰謝料や休業損害の金額が大きく増額される可能性があり、その意味でも専門的な助言を受ける意義は極めて大きいといえるでしょう。



弁護士が関与することで生まれる安心と公平


交通事故の被害者が弁護士に相談することの第一の利点は、専門的な知識と経験に基づいて、適正な賠償額を確保できる可能性が高まる点にあります。保険会社との交渉において、依頼者に代わって窓口となることで、負担を軽減するとともに、公平な土俵での対話を実現します。


また、後遺症が残る可能性のある事故では、「症状固定」の判断や「後遺障害等級認定」のための医証の取得など、医学的な観点からも高度な判断が求められます。弁護士は、必要に応じて主治医との連携や診断書の確認を行い、等級の適正な認定をサポートします。これによって、後遺障害慰謝料や逸失利益といった項目についても、より有利な評価を受けることが可能になります。


加えて、事故の相手が無保険であった場合や、過失割合をめぐって争いが生じているような複雑なケースでも、弁護士の介入によって事実関係の整理と法的主張の構築が可能となり、最終的な解決の道が開けることも少なくありません。



弁護士費用特約の活用という選択肢


交通事故に遭われた方のなかには、「弁護士に相談したいが、費用が心配だ」という声も多く聞かれます。こうした不安に対する答えの一つが、自動車保険等に付帯されている「弁護士費用特約」の存在です。

この特約は、事故の相手との間で法的な交渉や訴訟を必要とする場合、弁護士費用を保険会社が負担してくれる制度であり、保険契約者本人だけでなく、配偶者や同居の家族が被害に遭った場合にも適用されることがあります。当事務所でも、多くのご相談者がこの特約を利用し、自己負担ゼロで依頼されています。


「自分の保険に弁護士費用特約がついているか分からない」「どの範囲まで使えるのか知りたい」といった疑問も、お気軽にご相談いただければ、契約内容の確認からサポートいたします。



地域に根ざした法律事務所として


桐生市、みどり市周辺地域は、通勤や買い物の手段として車が日常生活の中心にあるエリアです。その一方で、交差点や見通しの悪い生活道路での接触事故、通学時間帯の人身事故など、地域特有の事故形態も散見されます。


弁護士法人わたらせ法律事務所では、こうした地域の交通事情に精通し、地元ならではのフットワークを活かした対応を心がけています。事故直後の初動相談から、示談交渉、後遺障害申請、訴訟対応に至るまで、地域の皆様の立場に立ち、きめ細かなサービスを提供してまいりました。


特に桐生市・太田市・館林市・みどり市・伊勢崎市など、東毛地域にお住まいの方からは、迅速な面談や現場に即した対応への評価を多くいただいております。地元密着の法律事務所だからこそできる支援がある――それが私たちの誇りです。



まとめにかえて 〜事故後の“最初の一歩”を迷わないために〜


交通事故の被害は、身体への影響だけでなく、生活全体にわたる深刻な問題を引き起こします。示談の内容次第では、その後の回復や生活再建にも差が出てくるため、「よく分からないまま話を進めてしまった」という事態は避けなければなりません。


どんなに小さな事故でも、「示談に応じてよいか迷っている」「提示された金額に納得がいかない」といった不安がある場合は、一度専門家に相談することをおすすめします。法律の力は、難しい手続のためだけにあるのではなく、“安心して暮らせる日常”を守るためにこそ、活用されるべきものです。


私たちは、交通事故でお困りの皆さまの「最初の一歩」に寄り添い、地域に根ざした安心の法的サービスをご提供してまいります。どうぞお気軽にご相談ください。


〔弁護士 馬場大祐〕


Copyright ©弁護士法人わたらせ法律事務所 All Rights Reserved.

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