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法律コラム

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この連載について


2024年(令和6年)、民法の家族法部分が大きく改正されました。父母の離婚後も子どもの利益を確保することを目的に、親権や養育費、親子交流などが見直され、法律は2024年5月17日に成立しました。施行は2026年4月1日を予定しており、改正点は一般の方にとっても身近な内容です。

先日、私は、ある士業団体の勉強会で、この改正をテーマとした勉強会の講師を務めました。この連載では、その勉強会のレジュメを元に、全14回にわたって改正のポイントをわかりやすくお伝えします。

第1回は「親の責務」に焦点を当て、条文が新設された背景や内容を解説します。



親の責務が新設された背景


旧法の不十分さと誤解


これまでの民法では、父母の一方が親権者にならない場合、その親が子どもに対してどのような責務を負うのかが明確に規定されていませんでした。

親権が権利として理解される傾向が強く、親権を持たない親は子に対して責任を負わないかのような誤解が生じていたのです。

この点を改め、父母双方が子の養育に関与し責任を果たすことが子どもの利益に資すると考えられたため、親の責務を明文化することになりました。


痛ましい事件が示した必要性


2018年3月には東京都目黒区で5歳の女の子が虐待の末に亡くなり、6月には養父だけでなく実母も逮捕されました。

女の子が残した反省文には「もうおねがいゆるして ゆるしてください おねがいします」と書かれ、社会に衝撃を与えました。

翌2019年1月には千葉県野田市で10歳の女の子が父親の暴力によって命を落とす事件も起こり、DVと児童虐待の関係が改めて浮き彫りになりました。

これらの事件は、親権者が子の人格を尊重し暴力を拒否しなければならないこと、また親の主体性が暴力によって奪われる危険性を社会に示しました。

法制審議会でもこうした反省を踏まえ、懲戒権を定めていた旧民法821条の削除と現行法821条(体罰などの禁止)の創設につながり、さらに今回の親の責務の新設へと議論が進みました。



子どもの人格を尊重する義務(第817条の12第1項)


改正民法第817条の12第1項では、父母が親権の有無や婚姻関係にかかわらず、子どもの心身の健全な発達を図るためにその人格を尊重し、年齢や発達の程度に配慮して養育しなければならないと明記しました。

この規定は、2022年の民法改正で創設された現行民法821条(体罰や子の発達に有害な行為を禁止)を下敷きにしつつ、親権者以外の親にも適用範囲を広げています。


子どもの意見を尊重することも含まれる


法制審議会では、子どもの意見表明権を条文に明記すべきだという意見が実務家から出ましたが、政府は条文中の「人格の尊重」に子どもの意見や意向を適切に考慮する趣旨が含まれていると答弁しました。

したがって、条文に直接「意見表明権」と書かれていなくても、子どもの考えを聞き尊重することは親の重要な責務だと位置づけられます。


バランスの取れた条文


条文前段には「心身の健全な発達を図るため」とあり、「未成年の」「20歳までの」といった限定が設けられていません。

法制審議会では対象範囲や文言について議論がありましたが、最終的に子どもの利益を最優先とするために柔軟な表現が採用されました。

これにより、子どもの意見を聞きつつも、親が保護すべき範囲が明確になっています。



扶養義務の明確化 – 生活保持義務


従来の民法でも、直系血族は互いに扶養義務を負うとされていましたが、その義務の程度は、解釈により、義務者が自己の生活を犠牲にしない範囲で、権利者の最低限度の生活を扶助する生活扶助義務と、自己と同程度の生活水準を維持することができるよう扶養すべき生活保持義務との2種類があると理解されていました。

改正民法では、父母は、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、子どもが自己と同程度の水準の生活を維持できるよう扶養しなければならないと定めています。

この明文化により、親が子どもの生活水準を意識しながら十分な養育費を用意する必要があることが強調されました。



親同士の人格尊重・協力義務(第817条の12第2項)


改正民法第817条の12第2項では、父母が婚姻関係の有無にかかわらず、子に関する権利行使や義務履行に関して互いに人格を尊重し協力しなければならないと規定しました。

これは、父母の対立が子どもの利益を損なわないようにするための総論的な規定です。

改正民法について説明した法務省パンフレットでは、以下のような行為がこの義務に反する可能性があると例示されています。

• 他方の親に対して暴力や脅迫、暴言、誹謗中傷を行うこと

• 別居している親が、同居している親による日常的な監護に不当に干渉すること

• 特段の理由もなく、子どもを無断で転居させること

• 親子交流の取り決めを特段の理由もなく拒否すること

これらの行為があると、親権者の指定や変更、親権喪失や停止の審判などで不利な材料となる可能性があります。

ただし、DVや児童虐待からの避難など急迫の事情により子どもを連れて転居する場合は、義務違反とはされません。

また、法制審議会ではこの規定が「フレンドリー・ペアレント・ルール」(別居親と面会交流に協力的な親を有利に評価するルール)ではないことが確認されています。

あくまで子どもの利益のために協力し合う姿勢を求めるものです。



まとめと次回予告


親の責務を明文化したことで、親権の有無に関わらず父母が子どもに対して負う義務がはっきりしました。

子どもの人格を尊重し、その意見に耳を傾けながら年齢や発達に応じて育てること、子どもが親と同じ生活水準を維持できるよう扶養すること、父母が互いに人格を尊重し協力することが法律上の義務となります。

目黒区や野田市で起きた虐待事件の教訓を踏まえ、子どもの利益を最優先に考える社会を目指す改正といえるでしょう。

次回の連載では、親権のあり方や共同親権の導入についてわかりやすく解説する予定です。どうぞお楽しみに。



〔弁護士 馬場大祐〕



私が過去に受けた不貞慰謝料の案件で、慰謝料を請求した相手方から、「パパ活なので慰謝料は支払わなくてよいはずだ」という反論がなされたことがあります。このような主張がなされる背景には、当事者間の関係を恋愛とは異なるものとして理解しているという事情があるのかもしれません。しかし、仮に当事者間に性的関係が存在した場合、このような主張は、法律上は説得力を持たないことが多いと考えられます。

 


不貞行為の成立要件と「パパ活の抗弁」の関係性


不貞行為に基づく慰謝料請求が認められるためには、一般的に次のような要件を満たす必要があります。なお、法的な要件としてはもう少し整理が必要ですが、本稿では一般の方に向けた分かりやすさの観点から述べています。


  1. 相手方(配偶者)に婚姻関係が存在すること

  2. 自由意思に基づいて性的関係を持ったこと

  3. 違法性が阻却される特段の事情がないこと(たとえば、強迫等による例外的事情)

 

「パパ活だから慰謝料は不要である」という主張について、それを述べる当事者から法的な位置づけを明確に説明していただくことは多くないのですが、要するに、恋愛ではなく金銭授受が目的の業務的な行為なので、違法性を欠くという趣旨に解釈できるのではないかと思います。

ただし、この主張をする際に注意しなければならないのは、法的な意味合いとして、相手方は自由意思で性的関係を持った事実自体は自白した上で、その正当性を主張しているに過ぎない点です。

つまり、パパ活だからという抗弁は、不貞行為を全面的に否定するものではなく、既に不貞行為を認めた上で、違法性がない(損害賠償責任を負わない)と主張するにとどまります。

不貞慰謝料を請求する側が証拠を持っていない場合でも、請求された側が自ら不貞の事実を認めれば、その事実が前提となって交渉や裁判が進んでいくことになります。そのため、後から不貞はなかったと主張しても、説得力を失ってしまう可能性が高いといえます。

このように、一度パパ活で肉体関係があったと認めてしまうと、不貞行為の事実は確定し、あとは正当化する特段の事情があるなどと主張するしかなくなります。

もっとも、パパ活の抗弁とは別に、たとえば「パパが既婚者であることを全く知らなかった」「パパとは食事をしただけで性的関係はない」といった反論もあり得ますが、これらは本稿のテーマからは少し外れるため、今回は触れません。



パパ活はリターンに比べてリスクが高い


近年、「パパ活」いう男女関係の形は、インターネットやマッチングアプリの普及により広く知られるようになりました。SNSや動画サイトなどでも関連する情報が数多く発信されており、若い世代を中心に、その言葉自体は以前よりも身近なものとして認識されるようになってきました。

しかし、実際には手軽に見える報酬の裏に、非常に深刻なリスクが潜んでいます。

手軽に収入を得られる活動として紹介されることもありますが、実際には思わぬ法的リスクを伴う場合があります。

インターネット上ではリスクが十分に説明されないまま手軽さのみが語られるケースもあり、注意が必要です。

 


法的責任を軽視しないことが大切


法律上、不貞慰謝料請求は「損害賠償請求権」という正当な権利行使の一つです。請求された側がこれを免れるためには、明確な反証や、違法性を否定するに足る特段の事情が必要になります。

金銭のやりとりがあっただけだから、恋愛ではなかったから、などという抽象的な説明は、訴訟上の抗弁としてはほとんど通用しません。むしろ、金銭の授受が明白であるほど、反倫理性が強調される危険もあるかもしれません。

不貞慰謝料の金額は、一般的には数十万円から数百万円に及び、ケースによってはさらに高額となることもあります。簡単に手を出せるから、簡単に何とかなるだろうと考えてしまうのは非常に危険です。



おわりに


「パパ活だから慰謝料は不要」という抗弁は、要件事実上も法律上も正当化し難い主張であり、裁判所に認められる可能性は極めて低いといえます。金銭の授受によって責任が軽減されることも、ほとんど期待できません。

もし不貞慰謝料の請求を受けた場合や、リスクを避けたいと考えている場合は、できるだけ早い段階で法律の専門家に相談されることをおすすめします。

手軽に稼げると思われがちなパパ活は、法的にも社会的にも多大なリスクを伴う行為であることを、ぜひ知っておいていただければ幸いです。


〔弁護士 馬場大祐〕



 当事務所は、2026年3月16日(月)、臨時休業いたします。

 ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。


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