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法律コラム

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民事不介入とは何か


日々の暮らしの中で、契約トラブルや金銭の貸し借り、家族や親族間での財産問題など、いわゆる「民事」上のトラブルに直面することは珍しくありません。こうした場合、「警察に相談すれば解決してくれるのではないか」と考える方もおられます。しかし、ここで立ちはだかるのが「民事不介入原則」です。


警察は原則として、個人間の民事的な争いごとには介入しません。これは、警察の本来的な役割が「刑事事件の捜査」と「公共の安全の確保」にあるためであり、たとえばお金の貸し借りや賃貸借契約の解除など、私的な権利関係の争いは、裁判所を通じて民事訴訟等の法的手段によって解決すべきとされているからです。


そのため、「お金を返してくれないから警察に相談したい」「敷金が返ってこないので警察に動いてほしい」といったご相談をいただくことがありますが、ほとんどの場合、警察は「それは民事の問題なので…」と対応を見送ります。この「民事不介入」という方針は、ある意味では公正中立な警察の立場を担保する重要な原則といえるでしょう。



刑事告訴という例外的ルートの存在


しかし、すべての民事トラブルが完全に警察の関与外かというと、そうではありません。実務上は、民事上のトラブルに該当するだけでなく、「刑事罰に該当し得る行為」が行われているとき、すなわち刑事事件としての性格を帯びた段階においては、警察や検察による捜査が可能となります。これが、民事不介入原則の“例外”にあたるケースです。


たとえば、金銭の貸し借りにおいて「はじめから返すつもりがなかった」ことが証拠からうかがわれる場合、単なる債務不履行ではなく「詐欺罪」が成立する可能性があります。あるいは、別居中の配偶者が勝手に自宅に入り込み、財産を持ち出した場合は、民事的な財産分与問題の側面を持ちつつも、「住居侵入罪」や「窃盗罪」が成立し得ます。


こうした場面では、「刑事告訴」という手段を講じることで、民事不介入の原則を突破し、刑事事件として警察に動いてもらえる可能性が生まれます。稀ではありますが、刑事告訴の実例において、結果的に被害回復の一助となるケースも存在します。



告訴を通じて得られる実務的な効果


では、実際に刑事告訴を行うことで、どのような実務的なメリットがあるのでしょうか。第一に挙げられるのは、「捜査機関の介入」による心理的プレッシャーです。特に加害者が金銭を支払わない、あるいは話し合いに応じないような状況において、刑事告訴が受理されることで、加害者側が示談に応じる姿勢を見せることが少なくありません。


第二に、「刑事処罰そのものの実現」です。被害者の名誉や権利が大きく侵害されている場合には、たとえ民事の損害賠償とは別に、加害者が刑事上の責任を問われることで、社会的な正義が果たされるという側面もあります。


さらに、刑事手続の中で押収・差押えがなされることで、証拠が散逸するのを防ぐことも可能となります。たとえば、SNSでの名誉毀損やリベンジポルノのようなケースでは、早期の証拠保全が極めて重要であり、刑事事件化によって迅速な対応が図られることが期待されます。


ただし、刑事告訴を行ったとしても、必ずしも受理・捜査・起訴に至るとは限りません。告訴が受理されるためには、刑事事件としての構成要件を満たすこと、すなわち「違法性」「責任能力」「故意・過失」などの要素が明確に立証される必要があります。この点については、弁護士による専門的な法的判断と証拠の精査が不可欠となります。



地域の弁護士としてお手伝いできること


私たち、わたらせ法律事務所は、桐生市やみどり市を中心に、多くの民事・刑事事件を扱ってきた経験があります。地域での人間関係が密な中で起こるトラブルは、単なる法的問題にとどまらず、生活全体に深い影響を及ぼすことも少なくありません。たとえば、ご近所トラブルがエスカレートして暴力沙汰に発展したり、職場の人間関係のもつれから名誉毀損や脅迫に至ったりといった事例において、刑事告訴という手段が現実的な選択肢となることもあります。


その一方で、感情的に刑事告訴を行ってしまうと、かえって相手を刺激し、逆効果になることもあります。告訴という選択肢が本当に適切なのか、あるいは民事手続での解決を優先すべきなのか。こうした判断には、法的知識だけでなく、全体像を見通す冷静な視点が求められます。


当事務所では、刑事告訴を視野に入れた法律相談も随時受け付けております。被害の実態や証拠の有無、今後の展望などを丁寧に伺い、告訴状の作成支援や、警察への提出まで責任をもって対応いたします。また、刑事告訴に至らない場合であっても、民事的手続による対応策をご提案し、依頼者の立場に立った最善の道を共に探ってまいります。



最後に


すべてのケースで有効とは限りませんが、「民事不介入だから何もできない」と諦めてしまう前に、そこに本当に刑事的な違法性がないか、一度立ち止まって考えてみることは重要です。実際、刑事告訴という手段は、法的に認められた正当な権利の行使であり、被害者が自らの権利を守るためにとることのできる重要な手段でもあります。


桐生市・みどり市の地域の皆さまが、トラブルに直面した際、正確な知識と冷静な判断をもって最適な選択ができるよう、私たち専門家が全力でサポートいたします。どんな小さな悩みでも構いませんので、お気軽にご相談ください。


〔弁護士 馬場大祐〕



 当事務所は、2025年10月7日(火)~10月10日(金)の期間、臨時休業いたします。また同期間中、郵便物は当事務所に配達されません。

 ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。


弁護士法人わたらせ法律事務所


群馬県桐生市やみどり市周辺で中小企業を営む経営者の皆さまにとって、日々の経営判断はまさに時間との戦いです。売上拡大や人材確保、資金繰りといった経営課題に追われるなか、つい後回しになりがちなのが「法務リスク」への対応です。しかしながら、法的なトラブルはある日突然、思わぬ形で顕在化し、経営に重大な打撃を与えることがあります。こうしたリスクを未然に防ぐうえで有効な手段の一つが、顧問弁護士の存在です。


本稿では、桐生市・みどり市周辺エリアの中小企業を念頭に置きながら、中小企業が直面しやすい法務リスクの実情と、顧問弁護士をどのように活用すべきかについて、実務の視点からわかりやすく解説いたします。



法務リスクは「思わぬところ」に潜んでいる


中小企業において法的なトラブルが発生する場面は、決して特別な出来事ではありません。たとえば、取引先との契約書をよく確認せずに進めてしまい、後日、支払いのトラブルに発展した。あるいは、従業員との労務問題がこじれて労働審判や訴訟に至った。さらに、社内でのパワハラ・セクハラをめぐる通報が突然入り、対応に窮する……こうした事例は実際に数多く見られます。


特に桐生市・みどり市のように地域密着型のビジネスを展開する中小企業では、取引先や従業員との関係が人的な信頼に基づいて築かれていることも多く、法的な整備を軽視してしまう傾向があります。「うちは昔からの付き合いだから大丈夫」「社員は家族みたいなものだからトラブルにはならない」という認識は、結果的にリスクの見落としにつながるおそれがあります。


法務リスクは、企業の規模にかかわらず存在します。そして、リスクが顕在化した後に対処するには、費用的にも精神的にも大きな負担が伴います。したがって、「何も起こっていない今」こそが、法的備えを進めるべきタイミングなのです。



顧問弁護士の役割と実務的メリット


こうした背景から活用を検討いただきたいのが「顧問弁護士」です。顧問弁護士とは、企業の継続的な法律相談を受け持つ弁護士のことで、医療機関で言えば「かかりつけ医」のような存在といえます。


顧問契約を結んでおくことで、法的トラブルが起きた際にすぐ対応してもらえるだけでなく、そもそも問題が起こる前に、契約書のリーガルチェックや社内規程の整備、就業規則の見直し、SNS炎上対策といった「予防法務」に注力することができます。


また、顧問弁護士がいることで、経営判断における法的視点の助言が得られる点も大きな強みです。たとえば、新規事業の展開にあたって法規制の確認を要する場合や、取引先との取引条件の見直しを進める場面など、経営の節目で適切な助言を得ることができるのです。


さらに、顧問契約により相談のハードルが下がることも、実務上の大きな利点です。「ちょっと聞いておきたい」「この書類、念のため確認してもらいたい」といった小さな相談でも、弁護士と定期的に連絡が取れる関係ができていれば、気軽に法的チェックを受けることが可能になります。これは、トラブルの早期発見と拡大防止に直結します。



顧問弁護士の存在が企業の信頼性を高める


顧問弁護士を置くことには、法的リスクの管理や助言という実務的なメリットだけでなく、対外的な「信用力の向上」という重要な側面もあります。


たとえば、取引先との契約締結時に、「顧問弁護士による確認を経て契約します」と一言添えるだけでも、契約内容に対する企業としての慎重な姿勢が伝わり、相手方に安心感を与える効果があります。また、従業員に対しても、法的な整備をきちんと行っている会社であるという信頼感につながり、働く環境の透明性が高まります。


さらに、採用活動や広報の観点からも、法務体制が整っている企業は「しっかりしている会社」という印象を与えることができ、優秀な人材の確保にも良い影響を与える可能性があります。法的なトラブルへの備えが結果として企業のブランド価値を高めるというのは、意外に見落とされがちですが、近年ではとても重要なポイントです。



地元密着型の弁護士だからこそできること


顧問弁護士を選ぶ際には、地域事情に明るく、企業の業種や業態に応じたアドバイスができる弁護士を選ぶことが重要です。桐生市・みどり市を拠点とする企業であれば、やはりこの地域に根ざした法律事務所を選ぶことが、的確でスピーディーな対応につながります。


たとえば、地元の取引先や行政との関係、地域特有の商習慣を把握している弁護士であれば、表面的な法解釈だけでなく、実情に即した現実的なアドバイスが可能です。また、地元での交渉事や信頼関係を重視する場面では、顔の見える関係の中で調整を行うことが円滑な解決に結びつくこともあります。


当事務所でも、桐生市・みどり市周辺エリアに拠点を置く中小企業様からの、契約書の整備や労務問題、クレーム対応、債権回収といった幅広い業務に随時受け付けております。地域の皆さまとの信頼関係を何よりも大切にしながら、それぞれの企業にとって最善の法的サポートを提供することを理念としております。



最後に:経営の安心は、法務の整備から


中小企業経営における法務リスクは、決して他人事ではありません。そして、トラブルの芽は小さいうちに摘むことが、経営の安定にとって何よりも重要です。そのためには、法務の専門家である弁護士と早期に連携し、継続的なサポート体制を築いておくことが望まれます。


「何かあったときに相談する弁護士」ではなく、「何も起こらないように先回りして動く弁護士」を身近なパートナーとして活用することが、これからの企業経営には欠かせません。


桐生市・みどり市周辺で顧問弁護士をご検討の方は、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。皆さまの事業が、地域とともに末永く発展されるよう、法律の面から全力でサポートいたします。


〔弁護士 馬場大祐〕

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