【交通事故】後遺障害認定を受けるために必要な手続と留意点
- わたらせ法律事務所
- 8月18日
- 読了時間: 5分
~桐生市、みどり市周辺地域で交通事故に遭われた方へ~
交通事故の被害に遭われた方の中には、治療を続けても完全には元の状態に戻らず、身体に痛みやしびれ、運動制限などが残ってしまうケースがあります。こうした「後遺症」が残った場合、それが法的に「後遺障害」として認められれば、保険会社から追加の損害賠償を受けることができます。しかし、この「後遺障害認定」は、自動的に受けられるものではありません。被害者側が一定の手続を踏まえ、適切に申請を行わなければ、正当に評価されずに本来受け取れるはずの賠償額が大きく減ってしまうおそれがあります。
交通事故後の手続に慣れている方は決して多くありません。本稿では、交通事故後に後遺障害認定を受けるための基本的な流れと、押さえておくべき留意点について、専門用語をなるべく避けつつ分かりやすく解説いたします。
後遺障害認定の手続とは
まず、「後遺障害」とは、治療によっても回復せず、将来的にも改善が見込まれない身体の不具合をいいます。たとえば、むち打ち症による首や肩の痛み、手足のしびれ、骨折による関節の可動域制限などが該当します。
このような障害が「後遺障害」として保険上も認められるためには、「損害保険料率算出機構」という機関に対して、後遺障害等級の認定申請を行う必要があります。認定を受けるには、主に次の二通りの方法があります。
ひとつは「事前認定」といって、加害者側の保険会社が、必要な書類を取りまとめて申請を代行する方法です。もうひとつは「被害者請求」といって、被害者自身(または代理人である弁護士など)が自ら資料を整えて申請する方法です。いずれも必要となるのが、症状固定(=これ以上治療しても改善が見込めない状態)と診断されたうえで、医師が作成した「後遺障害診断書」です。
この診断書が申請の中心的な資料となるため、内容の記載が極めて重要です。ところが、実際には、医師によって記載の仕方に差があったり、後遺障害の制度に精通していない場合も少なくありません。その結果、正当に後遺障害が残っているにもかかわらず、「非該当」と判断されてしまう例が後を絶ちません。
認定のために注意すべきポイント
後遺障害認定の可否や等級は、提出資料の内容によって大きく左右されます。そのため、申請前の段階で、いくつかの重要なポイントを意識して対応する必要があります。
まず、治療経過の中で、できるだけ早い段階から痛みやしびれの症状を主治医に伝え、カルテに記録してもらうことが重要です。なぜなら、後になって「症状が長期にわたり持続している」ことや「一貫して主張されていた」ことが、認定の根拠として重視されるからです。自己判断で治療を中断したり、医師に症状をうまく伝えられていなかったりすると、「症状が軽微である」「一過性である」などと誤解されかねません。
また、後遺障害診断書の作成にあたっては、症状の具体的な内容や部位、可動域の制限、神経学的所見(腱反射や筋力低下の有無)などが、正確かつ丁寧に記載されていることが必要です。診断書の記載が曖昧であると、等級認定に至らないか、実際の障害よりも低く評価されてしまう可能性があります。
加えて、むち打ち症のような、画像では異常が見えにくいケースでは、被害者の訴えの一貫性や説得力、神経学的検査結果などの整合性が重視される傾向があります。このような場合には、治療先の病院に加えて、神経内科や整形外科専門医でのセカンドオピニオンを受けておくことも一つの手です。
弁護士の関与が重要な理由
後遺障害の認定手続は、単に医師の診断書を提出すれば終わり、というものではなく、資料の収集・選別・補強、認定機関への説明の工夫など、専門的な判断が問われる場面が多々あります。被害者請求の形で進める場合、どのタイミングで症状固定とするか、どの検査を受けておくべきかといった戦略的判断が極めて重要となります。
ここで、弁護士が関与することの利点が浮かび上がります。交通事故事件に精通した弁護士であれば、治療経過や医師の所見をふまえたうえで、適切な等級認定が得られるよう書類の内容をチェックし、不足部分の補完や主張の組み立てを行うことができます。また、万が一、認定結果に納得がいかない場合には、「異議申立」という形で再審査を求めることも可能です。この段階では医学的・法的な観点からの反論資料が求められるため、専門的支援がなければ困難を極める場合が少なくありません。
私たちわたらせ法律事務所では、東毛地区における交通事故案件に数多く携わっており、後遺障害認定に関するサポート実績も豊富にございます。桐生市、太田市、足利市などの医療機関や整形外科との連携を大切にし、地域密着の視点から一人ひとりの相談者に丁寧に寄り添う対応を心がけております。
交通事故の被害は、けがの治療だけでなく、その後の生活に長く影響を及ぼすこともあります。だからこそ、後遺障害の有無や認定等級の違いが、将来的な補償にとって大きな分岐点となるのです。ご自身だけで対応することに不安を感じたら、どうか専門家にご相談ください。適切な助言とサポートによって、本来受け取るべき補償を確実に確保する一助となることを願ってやみません。