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【一般民事】SNS投稿による名誉毀損と損害賠償請求の実務

  • 執筆者の写真: わたらせ法律事務所
    わたらせ法律事務所
  • 1 日前
  • 読了時間: 4分

群馬県桐生市・みどり市周辺の皆様へ


現代社会において、SNSは個人の情報発信手段として広く普及しています。手軽に投稿できる一方で、言葉の選び方を誤ると、他人の名誉や社会的評価を傷つけることになり、思わぬ法的責任を問われることがあります。特に、X(旧Twitter)やInstagram、Facebookなどでの投稿内容をめぐって名誉毀損と判断され、損害賠償請求が提起される事案は、ここ東毛地域でも年々増加傾向にあります。


本コラムでは、SNSにおける名誉毀損がどのように法的責任を生じさせるか、その立証方法や損害額の算定基準、そして裁判・示談を含む対応の実務について、できるだけ平易な言葉で解説いたします。



SNS上の投稿が名誉毀損と判断される基準


名誉毀損とは、他人の社会的評価を低下させるような事実を摘示する行為をいいます。これは民法709条に基づく不法行為に該当し、損害賠償の対象となる可能性があります。また刑法230条でも、名誉毀損罪として処罰される可能性があります。


SNS投稿が名誉毀損とされるか否かは、次のような点が判断の基準となります。まず、対象の人物が特定できるかどうか。たとえ名前を出していなくとも、投稿の文脈や添付された画像、位置情報などから個人が特定できるようであれば、要件を満たす可能性があります。


さらに、その投稿が社会通念上「人の社会的評価を低下させる」と認められる内容かが問題になります。「あの人は不倫している」「仕事を怠けている」「金にだらしない」などといった事実関係に関する記載はもちろん、事実無根の中傷やあおり的表現もリスクを伴います。


もっとも、公益性があり、かつ真実であるか、あるいはそのように信じるに足りる相当な理由がある場合は違法性が阻却される余地もあります。これは「表現の自由」と「個人の名誉」のバランスをとるために認められた法律上の防御方法です。



実際に損害賠償請求を行う際の手続と注意点


名誉毀損があったと認められたとしても、実際に損害賠償を求めるには、投稿の記録、拡散状況、被害の程度などを具体的に立証していく必要があります。まず重要なのは、問題となった投稿のスクリーンショットやURLを確保しておくことです。投稿者が削除してしまった場合でも、証拠保全のために速やかな対応が求められます。


そのうえで、加害者の特定が必要になります。匿名アカウントであっても、プロバイダ責任制限法に基づき、発信者情報開示請求を通じて、IPアドレスや契約者情報を取得することが可能です。ただし、これは裁判手続を要するものであり、費用や時間もかかります。


被害の証明にあたっては、精神的苦痛の程度、拡散の規模、業務への影響の有無などを考慮して、慰謝料が算定されます。たとえば、小規模な個人間のトラブルであれば数十万円の範囲にとどまることもありますが、企業の信用毀損や広範な拡散を伴う場合には、より高額な請求が認められることもあります。


なお、法的措置をとる前に、内容証明郵便による削除請求や謝罪要求を行うことで、事前に話合いによる解決が可能な場合もあります。その場合は、証拠を残す意味でも弁護士を通じた対応が有効です。



地域密着型の弁護士による早期対応の重要性


SNSによる名誉毀損は、被害を放置していると、情報が瞬時に拡散されて二次被害・三次被害につながるおそれがあります。桐生市やみどり市といった地域社会においては、噂や評判が個人の生活や事業に直結しやすい面があり、名誉回復のためには迅速な対応が不可欠です。


そのためにも、投稿がなされた段階で、専門の弁護士に相談することが望ましいといえます。法的責任を問うべきか、示談で済ませるべきか、相手方の特定可能性はどの程度か、といった判断を、経験豊富な弁護士が的確に行うことで、早期の解決につながります。


また、名誉毀損にとどまらず、脅迫や業務妨害、個人情報の不正利用が含まれる場合には、刑事告訴も視野に入れた対応が求められます。被害が複合的である場合こそ、地元の実情に通じた弁護士が、関係機関との連携の中で、円滑に対応できる体制が重要です。



まとめにかえて


SNSは便利である一方で、他人の権利を侵害する危険も含んでいます。名誉毀損に関する法的トラブルは、誰にでも起こりうる身近な問題です。軽い気持ちで投稿した一文が、法的責任や社会的信用の失墜につながることもある以上、表現の自由と責任のバランスをしっかり認識することが求められます。

万が一、名誉毀損の被害に遭った、あるいはその疑いがある場合には、早期に専門家に相談することで、問題の深刻化を防ぎ、冷静かつ効果的な対応を講じることができます。当事務所では、桐生市、みどり市を中心とした地域に密着し、SNSによる名誉毀損に関するご相談を多数お受けしてきました。どうぞお気軽にご相談ください。


〔弁護士 馬場大祐〕

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