【一般民事】契約書作成における留意点とリスク管理の視点
- わたらせ法律事務所
- 6月24日
- 読了時間: 4分
~身近で遠い、契約トラブルを防ぐために~
企業活動や日常生活において「契約」は避けて通れないものでありながら、いざ契約書を作成する段になると「雛形を使えばいい」「口約束でも十分だろう」と軽視される場面が少なくありません。特に桐生市やみどり市のように地域密着型の信頼関係に根ざした取引文化がある地域では、「昔からの付き合いだから」「信頼しているから」という理由で文書化を怠ることが見受けられます。
しかし、こうした姿勢が思わぬ法的トラブルに発展することもあるため、契約書を単なる形式的なものと捉えず、リスクを管理するための重要なツールとして活用することが求められます。本稿では、契約書作成における基本的な留意点と、実務的なリスク管理の視点を解説いたします。
なぜ契約書が必要なのか ― 信頼関係だけでは守れないこと
契約書を取り交わす最大の意義は、当事者間の権利と義務を明確にし、トラブルを未然に防ぐ点にあります。たとえば、「納品日を過ぎても商品が届かない」「報酬が支払われない」「責任の所在が曖昧で損害賠償を請求できない」など、口頭でのやり取りだけでは解決が難しい事態は決して珍しくありません。
契約内容が文書として明記されていれば、万一紛争が生じた際にも、誰が何をすべきであったかを客観的に証明する手段になります。裁判所においても契約書は重要な証拠資料として機能し、法的保護の実効性が大きく異なってきます。桐生市やみどり市のような中小事業者が中心の地域では、個人事業主間や家族経営の会社同士でのやり取りも多く、こうしたトラブルを防ぐうえで契約書の整備は欠かせません。
契約書作成における基本的な留意点
契約書を作成する際、最も重要なのは「不測の事態に備える視点」です。契約は、順調なときのためではなく、関係が崩れたときのためにこそ存在するものです。そのため、以下のようなポイントをあらかじめ検討しておく必要があります。
まず、契約の目的や内容が曖昧にならないよう、具体的かつ明確な文言を用いることが重要です。たとえば「納期はなるべく早く」や「できる範囲で対応する」などといった曖昧な表現は、後々「言った・言わない」の争いにつながりやすくなります。また、当事者や契約期間、報酬額、支払時期、解除条件、秘密保持義務、損害賠償の範囲など、紛争になりやすい要素は必ず文面に盛り込むべきです。
また、契約条項の整合性にも注意が必要です。業務委託契約と請負契約では、成果物の完成責任の有無が異なるため、業務内容を記載する部分と報酬の支払条件などが矛盾しないよう、契約全体を俯瞰して確認することが求められます。
契約書によるリスク管理の視点
契約書は「万一のときの備え」として、リスク管理の中心的な役割を担います。たとえば、不可抗力条項を設けておけば、自然災害や感染症の流行といった予見不可能な事情で契約が履行不能となった場合に、損害賠償の免責が可能となります。
また、管轄裁判所の合意条項を入れておくことで、仮に訴訟となった場合の手続的負担を軽減することができます。これにより、遠方の裁判所に出向く必要を避けられるため、桐生市・みどり市の事業者にとっては、地元での対応が可能になるというメリットがあります。
さらに、契約違反があった場合に備えて、契約解除の条件や違約金の規定も整備しておくと、トラブル発生時における交渉の主導権を握ることができ、損失の拡大を防ぐ効果が期待できます。
顧問弁護士と連携することのメリット
契約書の作成やチェックは、インターネット上の雛形を参考にするだけでは不十分な場合が多く、事業の実情に合った内容に落とし込むことが重要です。そのため、法律の専門家である弁護士と連携することが、最も確実かつ安心な方法といえます。
特に、継続的な契約関係がある場合や、取引相手との力関係に差がある場合には、契約条項の一言一句が後々のリスクを左右することもあります。顧問弁護士がいれば、契約交渉段階から実務に即した助言を受けることができ、自社にとって不利な条件を排除することができます。
また、契約書の整備がなされている企業は、取引先や顧客に対して「信頼性の高い企業」としてのイメージを与えることにもつながります。法的リスクの管理だけでなく、対外的な信用力の向上にもつながる点は、桐生市やみどり市における地域密着型の企業にとって大きな価値となるでしょう。
地域に根ざした中小企業であっても、契約書の整備は決して軽んじることができないテーマです。自社の立場を守り、将来のトラブルを未然に防ぐためにも、日頃から契約に対する意識を高め、必要に応じて法律の専門家に相談する体制を整えておくことが肝要です。
弁護士法人わたらせ法律事務所では、桐生市・みどり市を中心とした地域企業の皆様に向けて、契約書の作成・チェック・契約交渉に関するご相談を随時承っております。安心して事業を継続していくために、ぜひ一度ご相談ください。
〔弁護士 馬場大祐〕