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【刑事事件】家族が薬物で逮捕された場合の初動対応と再犯防止策

~桐生市・みどり市の皆様へ、地域に根差した法律支援の観点から~



突然の逮捕、そのとき家族にできること


ある日、家族が薬物事件で逮捕されたという知らせを受ける――これは、誰にとっても現実とは思えない衝撃的な出来事です。しかし、その現実と直面したときこそ、冷静で的確な初動対応が求められます。


薬物事件における逮捕は、多くの場合、突然です。捜査機関が一定の証拠を収集し、所持や使用の事実があったと判断した場合、逮捕令状をもとに身柄を拘束します。家族に連絡が来るのは、その後です。


まず、逮捕直後は、被疑者本人と直接連絡を取ることはできません。留置施設に収容され、警察署で取調べが続く中、外部との接触が制限される「接見禁止措置」がとられている可能性もあります。こうした状況においては、弁護士への早期相談が非常に重要です。弁護士であれば、接見禁止中でも原則として本人と面会(接見)することができます。


当事務所でも「突然の逮捕にどう対処すればよいか分からない」といったご相談は多く寄せられます。地域の実情に精通した弁護士に早期に依頼することで、適切な法的対応と精神的な支えを得ることが可能になります。

弁護士は、勾留の回避や保釈請求を行うだけでなく、家族の不安や誤解を取り除き、本人の状況や見通しについて的確に説明します。これは、被疑者にとっても、社会とのつながりを絶やさずにいられる重要なステップです。



再犯のリスクとその現実


薬物事件において特に社会的な問題となるのが、再犯の高さです。中でも覚せい剤取締法違反に関しては、他の刑法犯と比べても際立った再犯者率が長年にわたって指摘されています。


法務省の犯罪白書(平成13年版)によれば、覚せい剤取締法違反により送致された者の再犯者率は、強盗や傷害、窃盗といった他の主要な刑法犯と比べて常に最も高く、昭和60年以降は2番目に高い傷害罪の再犯率をおよそ20ポイント以上も上回る水準で推移しています。とりわけ、暴力団に所属する者においては再犯者率が60%台で推移しており、それ以外の一般人でも、平成7年以降は40%前後の再犯者率が続いています。


さらに、覚せい剤事犯で受刑した人のうち、複数回刑務所に収容された経験を持つ者の割合は極めて高く、初犯での入所者よりも「2回目以上の入所者」が多数を占めている状況です。また、執行猶予の歴がある者の比率も他の犯罪と比べて顕著に高く、覚せい剤事犯では70~80%の者が執行猶予の経験を有していたという統計も示されています。つまり、一度逮捕され、処分を受けたとしても、それで薬物から抜け出せるわけではなく、多くの人が再び同じ行為に戻ってしまっているのです。


このことからも明らかなように、薬物事犯は「処罰を受けたか否か」ではなく、「根本的な依存症や環境にどう対応するか」が再犯防止のカギを握っています。再犯の背景には、薬物への身体的・精神的依存、交友関係、生活環境の不安定さなど、複合的な要因が絡み合っています。したがって、刑罰による矯正だけではなく、医療的なケアや社会的なサポートが不可欠なのです。



再犯防止のために家族ができること


再犯防止の鍵は、本人の意志だけではなく、周囲の環境やサポート体制にあります。家族の理解と協力があってこそ、薬物依存からの回復は現実のものとなります。


まず、薬物依存症は「意志の弱さ」ではなく「病気」であるという理解が不可欠です。この病気には、治療と支援が必要です。たとえば、群馬県内にも薬物依存の専門治療を提供する精神科クリニックや、更生保護施設、支援団体(ダルクなど)が存在します。こうした施設と連携しながら、医療的アプローチと社会的サポートを組み合わせることで、再発を防ぐ手立てが整います。


また、家族が主導して規則正しい生活リズムや安定した居場所を提供することも大きな意義があります。再犯の多くは、孤立や無職状態により社会との接点が失われたときに起こります。桐生市・みどり市周辺でも、就労支援を行う福祉機関とつながりを持ち、本人が地域社会の中で役割を持つことが重要です。


さらに、弁護士としての立場から言えば、再犯の芽を摘むためには、裁判や取調べの段階で既に「回復への第一歩」を踏み出しているという姿勢を見せることが、処分の軽減にも繋がる場合があります。たとえば、裁判の前に自主的に医療機関を受診し、治療を開始していることを示すことは、裁判所の判断にも良い影響を与えることがあります。



終わりに


家族が薬物事件で逮捕されたとき、「どうしてこんなことに」「もう信用できない」と感じるのは、自然なことです。しかし、その先に目を向けたとき、家族としてできることは確かに存在します。早期の法的支援、的確な医療的介入、そして何よりも温かくも毅然とした姿勢で向き合うことが、本人の社会復帰と再犯防止の鍵を握っています。

弁護士法人わたらせ法律事務所では、桐生市・みどり市を中心に、こうした薬物事件に関するご相談を多数お受けしています。突然の事態に戸惑われたときには、ひとりで悩まず、どうか専門家へご相談ください。地域の皆さまと共に、再出発の一歩を支えることが、私たちの使命です。


〔弁護士 馬場大祐〕


 
 

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