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法律コラム

current column in the law


群馬県桐生市・みどり市周辺の皆様へ


現代社会において、SNSは個人の情報発信手段として広く普及しています。手軽に投稿できる一方で、言葉の選び方を誤ると、他人の名誉や社会的評価を傷つけることになり、思わぬ法的責任を問われることがあります。特に、X(旧Twitter)やInstagram、Facebookなどでの投稿内容をめぐって名誉毀損と判断され、損害賠償請求が提起される事案は、ここ東毛地域でも年々増加傾向にあります。


本コラムでは、SNSにおける名誉毀損がどのように法的責任を生じさせるか、その立証方法や損害額の算定基準、そして裁判・示談を含む対応の実務について、できるだけ平易な言葉で解説いたします。



SNS上の投稿が名誉毀損と判断される基準


名誉毀損とは、他人の社会的評価を低下させるような事実を摘示する行為をいいます。これは民法709条に基づく不法行為に該当し、損害賠償の対象となる可能性があります。また刑法230条でも、名誉毀損罪として処罰される可能性があります。


SNS投稿が名誉毀損とされるか否かは、次のような点が判断の基準となります。まず、対象の人物が特定できるかどうか。たとえ名前を出していなくとも、投稿の文脈や添付された画像、位置情報などから個人が特定できるようであれば、要件を満たす可能性があります。


さらに、その投稿が社会通念上「人の社会的評価を低下させる」と認められる内容かが問題になります。「あの人は不倫している」「仕事を怠けている」「金にだらしない」などといった事実関係に関する記載はもちろん、事実無根の中傷やあおり的表現もリスクを伴います。


もっとも、公益性があり、かつ真実であるか、あるいはそのように信じるに足りる相当な理由がある場合は違法性が阻却される余地もあります。これは「表現の自由」と「個人の名誉」のバランスをとるために認められた法律上の防御方法です。



実際に損害賠償請求を行う際の手続と注意点


名誉毀損があったと認められたとしても、実際に損害賠償を求めるには、投稿の記録、拡散状況、被害の程度などを具体的に立証していく必要があります。まず重要なのは、問題となった投稿のスクリーンショットやURLを確保しておくことです。投稿者が削除してしまった場合でも、証拠保全のために速やかな対応が求められます。


そのうえで、加害者の特定が必要になります。匿名アカウントであっても、プロバイダ責任制限法に基づき、発信者情報開示請求を通じて、IPアドレスや契約者情報を取得することが可能です。ただし、これは裁判手続を要するものであり、費用や時間もかかります。


被害の証明にあたっては、精神的苦痛の程度、拡散の規模、業務への影響の有無などを考慮して、慰謝料が算定されます。たとえば、小規模な個人間のトラブルであれば数十万円の範囲にとどまることもありますが、企業の信用毀損や広範な拡散を伴う場合には、より高額な請求が認められることもあります。


なお、法的措置をとる前に、内容証明郵便による削除請求や謝罪要求を行うことで、事前に話合いによる解決が可能な場合もあります。その場合は、証拠を残す意味でも弁護士を通じた対応が有効です。



地域密着型の弁護士による早期対応の重要性


SNSによる名誉毀損は、被害を放置していると、情報が瞬時に拡散されて二次被害・三次被害につながるおそれがあります。桐生市やみどり市といった地域社会においては、噂や評判が個人の生活や事業に直結しやすい面があり、名誉回復のためには迅速な対応が不可欠です。


そのためにも、投稿がなされた段階で、専門の弁護士に相談することが望ましいといえます。法的責任を問うべきか、示談で済ませるべきか、相手方の特定可能性はどの程度か、といった判断を、経験豊富な弁護士が的確に行うことで、早期の解決につながります。


また、名誉毀損にとどまらず、脅迫や業務妨害、個人情報の不正利用が含まれる場合には、刑事告訴も視野に入れた対応が求められます。被害が複合的である場合こそ、地元の実情に通じた弁護士が、関係機関との連携の中で、円滑に対応できる体制が重要です。



まとめにかえて


SNSは便利である一方で、他人の権利を侵害する危険も含んでいます。名誉毀損に関する法的トラブルは、誰にでも起こりうる身近な問題です。軽い気持ちで投稿した一文が、法的責任や社会的信用の失墜につながることもある以上、表現の自由と責任のバランスをしっかり認識することが求められます。

万が一、名誉毀損の被害に遭った、あるいはその疑いがある場合には、早期に専門家に相談することで、問題の深刻化を防ぎ、冷静かつ効果的な対応を講じることができます。当事務所では、桐生市、みどり市を中心とした地域に密着し、SNSによる名誉毀損に関するご相談を多数お受けしてきました。どうぞお気軽にご相談ください。


〔弁護士 馬場大祐〕

~身近で遠い、契約トラブルを防ぐために~


企業活動や日常生活において「契約」は避けて通れないものでありながら、いざ契約書を作成する段になると「雛形を使えばいい」「口約束でも十分だろう」と軽視される場面が少なくありません。特に桐生市やみどり市のように地域密着型の信頼関係に根ざした取引文化がある地域では、「昔からの付き合いだから」「信頼しているから」という理由で文書化を怠ることが見受けられます。


しかし、こうした姿勢が思わぬ法的トラブルに発展することもあるため、契約書を単なる形式的なものと捉えず、リスクを管理するための重要なツールとして活用することが求められます。本稿では、契約書作成における基本的な留意点と、実務的なリスク管理の視点を解説いたします。



なぜ契約書が必要なのか ― 信頼関係だけでは守れないこと


契約書を取り交わす最大の意義は、当事者間の権利と義務を明確にし、トラブルを未然に防ぐ点にあります。たとえば、「納品日を過ぎても商品が届かない」「報酬が支払われない」「責任の所在が曖昧で損害賠償を請求できない」など、口頭でのやり取りだけでは解決が難しい事態は決して珍しくありません。


契約内容が文書として明記されていれば、万一紛争が生じた際にも、誰が何をすべきであったかを客観的に証明する手段になります。裁判所においても契約書は重要な証拠資料として機能し、法的保護の実効性が大きく異なってきます。桐生市やみどり市のような中小事業者が中心の地域では、個人事業主間や家族経営の会社同士でのやり取りも多く、こうしたトラブルを防ぐうえで契約書の整備は欠かせません。



契約書作成における基本的な留意点


契約書を作成する際、最も重要なのは「不測の事態に備える視点」です。契約は、順調なときのためではなく、関係が崩れたときのためにこそ存在するものです。そのため、以下のようなポイントをあらかじめ検討しておく必要があります。


まず、契約の目的や内容が曖昧にならないよう、具体的かつ明確な文言を用いることが重要です。たとえば「納期はなるべく早く」や「できる範囲で対応する」などといった曖昧な表現は、後々「言った・言わない」の争いにつながりやすくなります。また、当事者や契約期間、報酬額、支払時期、解除条件、秘密保持義務、損害賠償の範囲など、紛争になりやすい要素は必ず文面に盛り込むべきです。


また、契約条項の整合性にも注意が必要です。業務委託契約と請負契約では、成果物の完成責任の有無が異なるため、業務内容を記載する部分と報酬の支払条件などが矛盾しないよう、契約全体を俯瞰して確認することが求められます。



契約書によるリスク管理の視点


契約書は「万一のときの備え」として、リスク管理の中心的な役割を担います。たとえば、不可抗力条項を設けておけば、自然災害や感染症の流行といった予見不可能な事情で契約が履行不能となった場合に、損害賠償の免責が可能となります。

また、管轄裁判所の合意条項を入れておくことで、仮に訴訟となった場合の手続的負担を軽減することができます。これにより、遠方の裁判所に出向く必要を避けられるため、桐生市・みどり市の事業者にとっては、地元での対応が可能になるというメリットがあります。

さらに、契約違反があった場合に備えて、契約解除の条件や違約金の規定も整備しておくと、トラブル発生時における交渉の主導権を握ることができ、損失の拡大を防ぐ効果が期待できます。



顧問弁護士と連携することのメリット


契約書の作成やチェックは、インターネット上の雛形を参考にするだけでは不十分な場合が多く、事業の実情に合った内容に落とし込むことが重要です。そのため、法律の専門家である弁護士と連携することが、最も確実かつ安心な方法といえます。


特に、継続的な契約関係がある場合や、取引相手との力関係に差がある場合には、契約条項の一言一句が後々のリスクを左右することもあります。顧問弁護士がいれば、契約交渉段階から実務に即した助言を受けることができ、自社にとって不利な条件を排除することができます。


また、契約書の整備がなされている企業は、取引先や顧客に対して「信頼性の高い企業」としてのイメージを与えることにもつながります。法的リスクの管理だけでなく、対外的な信用力の向上にもつながる点は、桐生市やみどり市における地域密着型の企業にとって大きな価値となるでしょう。



地域に根ざした中小企業であっても、契約書の整備は決して軽んじることができないテーマです。自社の立場を守り、将来のトラブルを未然に防ぐためにも、日頃から契約に対する意識を高め、必要に応じて法律の専門家に相談する体制を整えておくことが肝要です。


弁護士法人わたらせ法律事務所では、桐生市・みどり市を中心とした地域企業の皆様に向けて、契約書の作成・チェック・契約交渉に関するご相談を随時承っております。安心して事業を継続していくために、ぜひ一度ご相談ください。


〔弁護士 馬場大祐〕


春先になると、毎年のように「退職代行」に関する話題がニュースやSNSで取り上げられます。とりわけ4月から5月にかけては、新卒で就職したばかりの若者が、わずか数週間で退職を決断するケースもあり、「退職代行を使って会社に出社せずに辞めた」というエピソードが注目を集めます。その背景には、新社会人と職場との間にあるミスマッチや、相談できる相手がいない孤立感、過重な労働や人間関係のストレスがあると考えられます。


群馬県桐生市・みどり市周辺においても、若年層の就労をめぐる悩みは決して他人事ではありません。退職代行サービスの利用を検討している方や、逆に経営者としてこのような退職に直面したことのある方も多いのではないでしょうか。しかし、退職代行には一見便利に見える側面とともに、法的リスクが潜んでいる点にも注意が必要です。今回は、退職代行と非弁行為との関係に焦点を当て、法律の観点から分かりやすく解説します。



退職代行とは何か


退職代行とは、依頼者に代わって勤務先に退職の意思を伝えるサービスのことを指します。「自分で辞めると言い出せない」「会社と連絡を取りたくない」「強く引き止められるのが怖い」といった理由から、第三者に連絡を委ねたいというニーズがあるのです。


これらの代行業者の多くはインターネットで簡単に依頼でき、LINEやメールなどを通じて即日で対応することもあります。一部の業者は「弁護士が対応」「法的サポート付き」などと謳い、安心感を前面に押し出しています。


ただし、ここで問題となるのが「誰が」代行するのかという点です。というのも、退職という行為そのものは私的な手続きに見えても、法的には雇用契約という契約関係を終了させる手続きであり、場合によっては労働条件や未払い賃金、損害賠償などの交渉が関係してくるため、慎重な判断が求められます。



非弁行為のリスクとは


「非弁行為」という言葉をご存じでしょうか。これは、「弁護士でない者が、報酬を得る目的で法律事務を取り扱うこと」を意味します。弁護士法第72条によって明確に禁止されており、違反すれば刑事罰が科されるおそれもあります。


たとえば、弁護士資格を持たない退職代行業者が、会社と「有給休暇の消化」「退職金の支払い」などについて交渉した場合、それは法律事務に該当し、非弁行為と判断される可能性があります。単に「退職の意思を伝える」という伝言役にとどまるのであれば、非弁行為に当たらないという考え方もありますが、現実にはその線引きが非常に曖昧で、トラブルの火種になりやすいのです。


また、依頼者本人が気づかぬうちに、非弁行為に加担することになってしまう可能性も否定できません。たとえば、違法な非弁業者を利用して会社と退職交渉を進めた結果、後になって「退職の効力に争いがある」と指摘されたり、損害賠償を請求されたりする事例もあります。



退職の意思表示は慎重に行うべき


退職は、基本的には民法627条に基づいて「2週間前に退職の意思表示をすれば自由に辞められる」とされています。しかし、それはあくまで法的な建前であり、現実の職場では引き継ぎの問題や就業規則による制限、さらには感情的なもつれなどが複雑に絡んできます。


そうした事情を踏まえると、「伝えるのが面倒だから」「会社に行きたくないから」という理由だけで代行業者に全てを任せるのは、後々のトラブルを招くことになりかねません。特に、残業代の未払いがある場合や、労働条件に不満がある場合には、法的な助言を踏まえて行動することが重要です。


退職は一つの権利であると同時に、労使双方の関係を円満に解消するための重要な手続きでもあります。感情的に一方的な通告をして終わり、というものではありません。



弁護士に相談する意義と安心感


このような場面において、弁護士に相談する意義は非常に大きいといえます。弁護士は、退職に関する法律的な知識だけでなく、労使交渉やトラブル解決の経験を豊富に有しています。退職を伝えるタイミングや方法、交渉の進め方などについて、依頼者の立場に立ってアドバイスを行い、必要に応じて会社側との交渉も適法に代行できます。


桐生市・みどり市周辺の地域でも、当事務所では若年層の退職相談を数多く受けており、「会社を辞めたいけれど、どうしても言い出せない」という方や、「未払いの給与があるが、何も言えずに辞めてしまった」というご相談にも対応してまいりました。


退職は人生の転機となる重大な選択です。だからこそ、非弁リスクを回避し、法的にも感情的にも納得できる形で新たな一歩を踏み出すために、法律の専門家のサポートを活用していただきたいと考えております。


〔弁護士 馬場大祐〕


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