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法律コラム

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~桐生市・みどり市周辺地域における身近なリスクと対応策~



酒気帯び運転の法的な位置づけと処分内容


飲酒運転と一口に言っても、法律上は「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」に分かれます。そのうち、より軽微とされるのが酒気帯び運転ですが、それでも決して軽視できるものではありません。酒気帯び運転は、道路交通法第65条に違反する行為であり、呼気1リットル中に0.15mg以上のアルコールが検出されれば該当します。


警察に停止を求められ、呼気検査で基準を超える数値が出た場合、現場での検挙が行われ、状況に応じて逮捕・勾留がなされることもあります。その後、刑事事件として検察官に送致され、罰金刑や罰則付きの不起訴処分、あるいは公判請求(起訴)に至る可能性があります。刑罰としては、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が法定されていますが、実務上は、体感ですが、初犯でもいきなり公判請求(起訴)されているケースが多いようです。


これにとどまらず、行政処分という別の制裁も並行して科されます。基準値に応じて13点または25点が加算され、前歴や累積点数によって90日から180日の免許停止、または取り消し処分となる場合があります。たとえ刑事事件で寛大な処分がなされたとしても、運転免許の効力を維持できるとは限らないのが酒気帯び運転の厳しい現実です。



車社会での傾向と身近な相談


桐生市やみどり市のような地方都市では、自動車が生活に不可欠な手段となっている方が多く、飲酒後の「ちょっとそこまで」という油断から違反に及んでしまう事例が後を絶ちません。当事務所にも、「飲酒量は少なかったが、基準をわずかに超えてしまった」「代行運転が見つからず、仕方なく運転してしまった」など、切実な相談が寄せられています。


こうした事案においても、現場の状況や供述の信頼性、検査の手続に違法がなかったかといった点を丁寧に検討することで、刑事責任の軽減や不起訴処分の獲得につながる可能性があります。また、行政処分に対しても、聴聞手続や弁明書の提出により、一定の減免措置が認められることがあります。特に免許停止期間の短縮講習の利用や、仮免許申請の制度などを上手く活用することで、社会生活への影響を最小限にとどめることが可能です。



軽減の可能性と弁護活動の重要性


刑事事件としての酒気帯び運転において、軽減措置を得るためには、初動の対応が極めて重要です。逮捕された場合、速やかに弁護人を選任し、取調べで不利益な供述をしないよう助言を受ける必要があります。過去の類似事例では、被疑者が反省の意を明確に示し、再発防止策を実行していたことが、減刑理由となった例もあります。


さらに、行政処分についても、処分理由書に記載された内容が事実と異なる場合や、手続的な瑕疵が疑われる場合には、異議申立てや行政訴訟の検討が必要となります。これらの対応には専門的な法的知見が不可欠であり、早期の相談が事態の改善に直結します。



再発防止と地域に根差した支援


酒気帯び運転は一時の判断ミスでありながら、その代償は決して小さくありません。そして一度、記録に残ることで、今後の生活の選択肢が狭まるおそれもあります。だからこそ、再発防止への取り組みもまた、弁護活動と並ぶ重要な柱となります。


当事務所では、単に処分の軽減を目指すだけでなく、依頼者の生活状況や家庭環境を丁寧に聞き取り、再発防止の具体的な策まで含めた包括的な支援を行っています。アルコールとの関係性を見直し、カウンセリングを受けたり、通勤や送迎の代替手段を模索したりすることも、生活再建の大切なステップです。


桐生市・みどり市周辺では、車の運転が欠かせない地域事情もあり、飲酒運転によって仕事や家庭に及ぼす影響は深刻です。しかし、適切な法的サポートがあれば、刑事・行政両面でのリスクを和らげる道も開かれています。もしご家族やご本人が酒気帯び運転の疑いで摘発された場合には、早期に法律の専門家へご相談いただくことを強くおすすめします。


〔弁護士 馬場大祐〕


~桐生市・みどり市周辺にお住まいの皆さまへ~



示談とは何か――日常の延長にある法的手続


刑事事件というと、多くの方が「裁判」「警察」「刑罰」といった重々しいイメージを抱かれるかもしれません。しかし実際には、日常生活のなかで思わぬ拍子に「刑事事件」に該当してしまう行為は少なくありません。たとえば、駅で人と肩がぶつかり口論の末に突き飛ばしてしまった、スーパーでつい魔が差して小物をポケットに入れてしまった、あるいはSNSで不用意に書き込んだ内容が名誉毀損とされた、こういった軽微な事案でも刑事事件として取り扱われる可能性があります。


こうした軽微な事件において重要な意味を持つのが「示談」です。示談とは、加害者と被害者との間で被害回復や今後の関係整理を目的として、金銭の支払いや謝罪などを内容とする合意を取り交わすことを指します。示談は民事的な側面を持ちつつも、刑事手続においても大きな影響力を持ち、事件の結末を左右することも少なくありません。


特に、桐生市やみどり市といった地域社会では、顔見知りの間でトラブルが発生することも多く、感情的なもつれが背景にある場合もあります。そのため、冷静な第三者として弁護士が介入することによって、当事者双方の納得を得ながら事態を円満に解決へと導く「示談」の役割は、より一層重要なものとなります。



示談がもたらす法的・実務的メリット


示談が成立することにより、被害者の被害感情が和らぎ、再発防止への信頼感が生まれます。そして、その結果として、刑事手続上でも多くの利点が生じます。


まず、検察官の不起訴処分の判断に影響を与える点が挙げられます。刑事事件は、警察の捜査を経て検察官が起訴するか否かを判断する流れで進みますが、被害者と示談が成立し、かつ被害者が処罰を望まない旨を表明している場合には、検察官が「起訴猶予」という形で事件を終結させることが多くなります。これは「法的には罪に問えるが、情状に鑑みて今回は裁判にかけずに済ませる」という判断です。


また、万一、起訴されてしまった場合であっても、示談の有無は量刑判断において大きく作用します。たとえば、罰金刑にとどまるか、執行猶予が付くか否か、あるいは略式手続で済むか正式裁判になるかといった場面で、示談の成立は裁判所にとって被告人の反省・更生の姿勢を示す重要な材料となります。

さらに、少年事件においては、家庭裁判所の審判においても示談の有無は非行の深刻度や保護処分の必要性を判断するうえで大きな要素となります。桐生市やみどり市においても、地元の中学校や高校で発生する非行事案については、地域の風土や家庭環境とのかかわりも重視されることから、示談による円満な解決が強く推奨されています。



示談交渉における弁護士の役割と注意点


実際に示談を行うにあたっては、当事者同士が直接やりとりを行うことは、かえって感情的な対立を深めることになりかねません。特に刑事事件においては、「加害者」と「被害者」という立場の非対称性が強いため、専門的知識と中立性を兼ね備えた弁護士が介入することが必要不可欠です。


まず、弁護士は加害者から事情を聴取し、被害者への誠意ある対応方針を整理したうえで、示談交渉に着手します。その際、被害者の感情に配慮しながら、謝罪の伝え方や金銭の支払方法、将来的な接触の可否といった諸条件をすり合わせ、双方にとって納得できる内容を目指します。


また、示談書の作成においても、刑事手続での有効性を担保するために、法的に整った文言や署名押印の形式が求められます。示談書には通常、被害者が「加害者をこれ以上処罰することを望まない旨(いわゆる宥恕条項)」を記載することが多く、これが起訴猶予や軽い処分につながる根拠となります。


ただし、示談が成立すればすべてが解決するというわけではありません。たとえば、公共の秩序を侵すような犯罪では、たとえ被害者が許しても、検察官が「社会的な責任を問う必要がある」と判断して起訴に踏み切ることもあります。そのため、示談の位置づけを過度に過信せず、全体の手続のなかでどのような意味を持つのかを、弁護士とよく相談することが肝要です。



地域のなかで「解決」を支えるという視点


私たちが拠点を置く桐生市やみどり市は、地域社会のつながりが比較的密接である一方、近年は多様な価値観の衝突やSNSを介したトラブルも増加傾向にあります。こうしたなかで、「事を荒立てたくない」「周囲に知られたくない」といった当事者の声に寄り添いながら、法的に筋を通しつつ柔軟な解決を図る示談の意義は、ますます高まっています。


私たち弁護士法人わたらせ法律事務所では、こうした地域密着型の問題解決に力を入れており、加害者・被害者のいずれの立場であっても、早期にご相談いただくことで適切な示談対応が可能となります。事件に直面し、不安や戸惑いを抱えることもあるかと思いますが、まずは事実を正確に受け止め、冷静に対応することが重要です。


〔弁護士 馬場大祐〕



春の訪れとともに、職場では人の入れ替わりが増える季節を迎えます。新たな門出に胸を膨らませる人がいる一方で、様々な事情から退職という選択をする方もいます。そんな中、2024年4月17日に報じられた1000円の着服によって退職金1200万円が不支給となった事案は、多くの方の関心を集めました。



たった1000円で退職金がゼロに?という驚きとともに、そこまで厳しい処分が妥当なのかという素朴な疑問を持たれた方も少なくないのではないでしょうか。


このコラムでは、群馬県桐生市やみどり市周辺で日々企業や個人の労務問題に携わる弁護士の立場から、この判例の背景や意味を解説し、私たちの地域社会における労働環境にも通じる教訓を掘り下げてみたいと思います。

 


信頼関係に基づく雇用と些細な非行の重み


この裁判の主人公は、京都市バスの元運転手である58歳の男性。2022年2月、乗客から受け取った運賃1000円を本来投入すべき精算機に入れず、自らの制服ポケットに収めたことが、ドライブレコーダーの映像から発覚しました。その後、男性は懲戒免職となり、長年勤務してきた対価として本来受け取れるはずであった約1200万円の退職金も支給されない処分を受けました。


この一連の処分について、最終的に最高裁は適法と判断しました。大阪高裁ではいったん処分が重すぎるとして取り消されていましたが、最高裁はこれを覆し、公金の着服は重大な非違行為であると明確に言い切っています。


ここで重要なのは、金額の多寡ではなく、行為の質、すなわち、どれだけ社会的信頼を損ねるものであったか、という観点です。バス運転手という職責は、安全輸送のみならず、公金の適正な処理を含めた信頼性を前提とした業務です。仮に金額が小さくとも、その行為が組織全体の信用を揺るがすものであれば、結果的に処分は厳格にならざるを得ません。

この事案からは、ちょっとくらいなら…という気の緩みが、いかに重大な結果を招くかがよく分かります。雇用契約は、法的には労働の提供と報酬の支払いという経済的な側面が重視されがちですが、実際には信頼関係という見えにくい土台が存在しています。この信頼を失った瞬間、法的にも社会的にも雇用関係は維持困難となるのです。

 


地域における中小企業でも起こりうる問題


私たちが事務所を構える桐生市・みどり市周辺においても、地域経済を支える多くの中小企業が日々、従業員との信頼に基づいた運営を行っています。私たちが相談を受ける中でも、些細な不正行為や就業規則違反がきっかけで、長年勤務した従業員との関係が悪化してしまう例は決して少なくありません。


たとえば、会社の備品を無断で持ち帰ったり、出勤記録を故意に操作したりといった行為も、金額的には微々たるものと感じるかもしれません。しかし、これらの行為は、他の従業員への示しや職場全体のモラル維持に直結するため、会社としても見過ごすことはできないとの判断を下す場面が多々あります。


地域密着の企業であればあるほど、顔が見える関係が大切にされる一方で、一度信頼を損なえば、取引先や他の従業員との関係にも影響が広がってしまいます。その意味で、法的な損害額ではなく、組織秩序に与える影響を重く見る傾向が強くなります。

さらに、退職金というのは多くの場合、就業規則に基づいて支給される任意の恩恵的制度であり、懲戒解雇が有効とされれば、その不支給もまた適法と判断される可能性が高いです。この点を誤解して退職金は当然もらえるものと思い込んでしまうと、後になって大きな不利益を被ることにもなりかねません。

 


再発防止のために必要なルールの見直しと対話


このような事件が起きたとき、企業としてはルールに則って処分したという対応だけでなく、そもそもそのような不正が生まれにくい環境づくりができていたのかを振り返る必要があります。業務が属人的になっていたり、チェック体制が形骸化していたりすれば、不正は水面下で広がってしまいます。


また、従業員側としても、仕事に慣れてくると気が緩んでしまう些細なことなら黙認されるという職場の空気に流されず、自らの行動が社会的評価に直結することを意識する必要があります。とくに地域の企業では、従業員一人ひとりの振る舞いが会社の評判を左右する場面も多く、結果的に地域全体の信頼にも影響を及ぼしかねません。


私たち弁護士は、こうした事態が起こった後に対処するだけでなく、予防のための制度設計や、就業規則の整備、職場研修のサポートなども行っています。桐生市・みどり市エリアの事業者の皆様には、日常の些細なトラブルの芽を摘むためにも、ぜひ気軽に法務の専門家を活用していただければと思います。


 

終わりに


1000円の着服で1200万円の退職金が失われた――このニュースは、一見すると釣り合いが取れていないように感じられるかもしれません。しかし、働く上で最も大切な信頼という価値が損なわれたとき、結果としてこのような厳しい判断が下されるのです。

法律は冷たく感じられることもありますが、その根底には公平と秩序の理念があります。そして、それを私たち一人ひとりが理解し、支えていくことで、安心して働ける地域社会が育まれていくのです。

些細なことだからと油断せず、日々の行動に自信と誠実さを持って、良好な労働関係を築いていくことが、私たちの地域をより健やかにしていく第一歩となることでしょう。弁護士として、皆様の歩みに寄り添い、健全な労使関係づくりを支える存在でありたいと願っています。


〔弁護士 馬場大祐〕

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