【刑事事件】軽微な刑事事件における示談の意義と実務対応
- わたらせ法律事務所
- 6月2日
- 読了時間: 4分
~桐生市・みどり市周辺にお住まいの皆さまへ~
示談とは何か――日常の延長にある法的手続
刑事事件というと、多くの方が「裁判」「警察」「刑罰」といった重々しいイメージを抱かれるかもしれません。しかし実際には、日常生活のなかで思わぬ拍子に「刑事事件」に該当してしまう行為は少なくありません。たとえば、駅で人と肩がぶつかり口論の末に突き飛ばしてしまった、スーパーでつい魔が差して小物をポケットに入れてしまった、あるいはSNSで不用意に書き込んだ内容が名誉毀損とされた、こういった軽微な事案でも刑事事件として取り扱われる可能性があります。
こうした軽微な事件において重要な意味を持つのが「示談」です。示談とは、加害者と被害者との間で被害回復や今後の関係整理を目的として、金銭の支払いや謝罪などを内容とする合意を取り交わすことを指します。示談は民事的な側面を持ちつつも、刑事手続においても大きな影響力を持ち、事件の結末を左右することも少なくありません。
特に、桐生市やみどり市といった地域社会では、顔見知りの間でトラブルが発生することも多く、感情的なもつれが背景にある場合もあります。そのため、冷静な第三者として弁護士が介入することによって、当事者双方の納得を得ながら事態を円満に解決へと導く「示談」の役割は、より一層重要なものとなります。
示談がもたらす法的・実務的メリット
示談が成立することにより、被害者の被害感情が和らぎ、再発防止への信頼感が生まれます。そして、その結果として、刑事手続上でも多くの利点が生じます。
まず、検察官の不起訴処分の判断に影響を与える点が挙げられます。刑事事件は、警察の捜査を経て検察官が起訴するか否かを判断する流れで進みますが、被害者と示談が成立し、かつ被害者が処罰を望まない旨を表明している場合には、検察官が「起訴猶予」という形で事件を終結させることが多くなります。これは「法的には罪に問えるが、情状に鑑みて今回は裁判にかけずに済ませる」という判断です。
また、万一、起訴されてしまった場合であっても、示談の有無は量刑判断において大きく作用します。たとえば、罰金刑にとどまるか、執行猶予が付くか否か、あるいは略式手続で済むか正式裁判になるかといった場面で、示談の成立は裁判所にとって被告人の反省・更生の姿勢を示す重要な材料となります。
さらに、少年事件においては、家庭裁判所の審判においても示談の有無は非行の深刻度や保護処分の必要性を判断するうえで大きな要素となります。桐生市やみどり市においても、地元の中学校や高校で発生する非行事案については、地域の風土や家庭環境とのかかわりも重視されることから、示談による円満な解決が強く推奨されています。
示談交渉における弁護士の役割と注意点
実際に示談を行うにあたっては、当事者同士が直接やりとりを行うことは、かえって感情的な対立を深めることになりかねません。特に刑事事件においては、「加害者」と「被害者」という立場の非対称性が強いため、専門的知識と中立性を兼ね備えた弁護士が介入することが必要不可欠です。
まず、弁護士は加害者から事情を聴取し、被害者への誠意ある対応方針を整理したうえで、示談交渉に着手します。その際、被害者の感情に配慮しながら、謝罪の伝え方や金銭の支払方法、将来的な接触の可否といった諸条件をすり合わせ、双方にとって納得できる内容を目指します。
また、示談書の作成においても、刑事手続での有効性を担保するために、法的に整った文言や署名押印の形式が求められます。示談書には通常、被害者が「加害者をこれ以上処罰することを望まない旨(いわゆる宥恕条項)」を記載することが多く、これが起訴猶予や軽い処分につながる根拠となります。
ただし、示談が成立すればすべてが解決するというわけではありません。たとえば、公共の秩序を侵すような犯罪では、たとえ被害者が許しても、検察官が「社会的な責任を問う必要がある」と判断して起訴に踏み切ることもあります。そのため、示談の位置づけを過度に過信せず、全体の手続のなかでどのような意味を持つのかを、弁護士とよく相談することが肝要です。
地域のなかで「解決」を支えるという視点
私たちが拠点を置く桐生市やみどり市は、地域社会のつながりが比較的密接である一方、近年は多様な価値観の衝突やSNSを介したトラブルも増加傾向にあります。こうしたなかで、「事を荒立てたくない」「周囲に知られたくない」といった当事者の声に寄り添いながら、法的に筋を通しつつ柔軟な解決を図る示談の意義は、ますます高まっています。
私たち弁護士法人わたらせ法律事務所では、こうした地域密着型の問題解決に力を入れており、加害者・被害者のいずれの立場であっても、早期にご相談いただくことで適切な示談対応が可能となります。事件に直面し、不安や戸惑いを抱えることもあるかと思いますが、まずは事実を正確に受け止め、冷静に対応することが重要です。
〔弁護士 馬場大祐〕