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ワイン紀行 連載第一回

「運命の一杯――私とワインの出会い」



 私がワインという飲み物に「出会った」と言えるのは、1987年のことでした。それは、単なる食中酒としてではなく、文化や歴史、美意識が詰まった芳醇な世界への扉を開いてくれた、まさに運命的な出会いでした。



 この年、私は妻とともにローマおよびパリを旅しました。新婚旅行が叶わなかったこともあり、ようやく実現した夫婦二人の海外旅行でした。旅の締めくくりはパリ、ド・ゴール空港の免税店。私は洋酒好きで、ウィスキーでも買おうかと物色していたときのことです。ふと目に留まったのは、日本円にして一本一万円を超える、いかにも高級そうなフランス産の赤ワイン。当時の私はワインについてほとんど知識がなく、「ワインは一度開けると飲み切らなければならない」「一度の飲食に一万円以上を費やすのは贅沢ではないか」と、購入をためらっていました。売り場の前で逡巡することおよそ三十分。最終的に背中を押してくれたのは、妻の一言――


「欲しいなら、買えばいいじゃない」。


その言葉に、私はようやく手を伸ばしました。



 帰国後、そのワインを静かに開けてグラスに注ぎ、一口含んだ瞬間、私は衝撃を受けました。それは、これまでの人生で味わったどの酒とも異なる、深みと広がりに満ちた味わい。まさに「昇天するような」感覚としか言いようのない美味しさでした。当時は産地やヴィンテージについての知識も皆無で、今となっては銘柄も定かではありません。しかし、瓶の形状などから推測するに、あれはボルドー地方のワインであったことは間違いないでしょう。



 この一杯をきっかけに、私はワインの奥深い世界に魅了され、以来三十年以上にわたり、蒐集と探究を続けてきました。次回は、ワインとの出会いの後、私がどのようにその魅力に引き込まれ、どのような銘柄を追い求めていったのか、蒐集の歩みについてご紹介したいと思います。


〔弁護士 池末登志博〕


 
 

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